愛犬とのお別れ つづき

 ペットと暮らしている人は沢山いると思います。人とペットとの寿命の差から、どうしてもペットを見送る立場になってしまいます。悲しみから立ち直れずに体調を崩してしまう方も沢山いるとお聞きします。私も普段は普通に生活する事ができていますが、心の真ん中にぽっかり空いた穴はなかなか埋まりそうにありませんし、埋めようとも思いません。
 愛犬とのお別れを経験して、「生きる」事を考えました。続きをお話したいと思います。

ミルクとの思い出

 我が家の息子が小学校へあがるのをきっかけに最初のマルチーズ♂のチーズをお迎えしました。あまりの可愛さにもう1匹欲しいと思っていたところ、娘の誕生日に素敵な偶然が重なり、ミルクに出会いました。主人は反対しましたが、私が押し切ってその場でお家へ連れて帰りました。
 ミルクは賢い賢いワンコでした。今までの歴代ワンコの中で唯一テレビを見ました。お気に入りは目覚ましテレビの今日のワンコでした。始まるとテレビに突進、画面から消えるとテレビの後ろを覗き込みました。
 子犬の頃はよく遊び、履こうとしている靴下を咥えしっぽを振り振り逃げ回る。食いしん坊で、夜残りのご飯を冷凍しようと炊飯器を開けたら、どこからか飛んできて欲しいのアピール。
ほんとにほんとに愛おしいワンコでした。
 チーズが心臓病で亡くなった時は、チーズが病院へ行くときに使っていたキャリーを毎朝、覗きに行きました。ミルクはチーズを探していたのだろうと思います。

認知症になって

すき間に

 以前ブログ「犬の認知症」にも書きましたが、ミルクもおじいちゃんになって認知症になりました。
狭い所に入り込む、バックできず前進のみ、慌てて家中のすき間を埋めました。
夜泣きはほとんどなかったのですが、たまに、丸1日ほど食事も水も飲まずに眠ってしまう事がありました。

白内障 水晶体脱落

水晶体
ミルク右目

 人間と同じくワンコも年を取ると白内障になります。ミルクは目が充血していき、ある時沢山目ヤニが出るようになりました。このころには足腰が弱っており、すぐにバタンと倒れる事が多くなっていました。ある日倒れた時に白内障が酷い方の眼から出血しました。びっくりして動物病院で診てもらいました。白内障が原因でしょうと言われました。獣医さんから水晶体が取れる事がある聞きました。それからしばらくして、本当に真珠のような丸くて固い球のようなものが、ソファに落ちていました。ミルクの眼を見たらぽっかり穴が空いていました。毎日洗眼と点眼液で化膿しないように注意してしばらくで穴はふさがりました。

しっぽの腫瘍

 15歳の頃だったか、おしっぽのところにできものができて、動物病院で診てもらったら、生殖器のホルモンからの腫瘍だと思う、断尾して、去勢手術もしましょうと言われました。20歳目指すなら今手術をと勧められましたが、痛がる様子も特になかったので、結局手術を受けさせませんでした。晩年肛門のところの膿瘍からじくじく出血する事はありましたが、手術を選ばなかった事は後悔はしていません。20歳には届かなかったけれど、18歳9か月一緒に過ごせたのですから。

いきなりやってきた食欲不振

ミルク18歳の
お誕生日

 2023年11月になり、今まで目が見えなくても、歯がほとんどなくても普通にドライフードとささみのご飯をがつがつ食べてたのに、ご飯を食べなくなりました。検査の結果腎機能がすごく悪くなってる、今まで食べられてたのが不思議なくらいと言われ、毎日点滴に通うことになりました。
その頃から時々痙攣を起こすことが多くなってきました。
 以前からたまに痙攣が有りましたが、脳から来ているのもかどうかわからず、心臓は問題ないようなので点滴でBUNが下がらなければこれ以上対処の方法はないですと言われていました。その後獣医さんのアドバイスのりんごジュースをほんの少しだけしか受け付けなくなりました。全く食べられなくなりました。
腎機能の改善も見られず、痙攣が治まらなくなってきました。
先生からどうしようもないとは言われていましたが、無理を承知で診てもらいました。検査の結果、カルシウムが低下している事がわかり、点滴でカルシウム値を補正してもらうと半日から1日くらいは痙攣が治まる繰り返しでした。
 獣医さんに延命治療をお願いしながら、話をしました。
「今私が毎日点滴に連れてきているのは、1日でも長く一緒にいたいと思う気持ちは、私のエゴでしょうか?」その時、獣医さんが、「動物は人間のように苦しいからもう治療はやめてくれとか、そんな事は思っていない、自分のペースでその時を迎えているはずですよ。自分の家で安らかに逝くのが一番の幸せだと思う。」とお話して下さり、心が救われました。
 前回に話しましたが、12月7日にライスが先にお空へ帰って行きました。ミルクとライスは仲良しだったので、今にもライスを追いかけて行きそうな予感がありました。覚悟はしましたが、どうしても現実を受け入れる事はできませんでした。
 血液検査、点滴を続け、その5日後12月11日の朝の4時前(はっきり覚えていません)一緒に寝ていたところ、気分が悪くなったようで、吐き気を訴え、下痢をして、その後痙攣、主人と私の腕の中で最後の息を吐きだしてお空へ帰って行きました。本人は最期まで頑張って生きました。

生きるということ

 犬が大好きで大好きで、小学校の頃から家にはいつも犬がいました。仕事と育児に追われ、疲れて家に帰って来て犬に癒されていました。鍵っ子だった我が家の子供たちも犬がいたから少しは寂しさももまぎれていたと思います。犬が年老いて介護が必要になり、大変な事も有りましたが、逆に赤ちゃんに戻ったように愛おしい気持ちが増していきました。
少しでも一緒にいたいと思いました。薬剤師の仕事もパートになっていてよかったと思いました。
 一緒にいられる時間が何よりの私の幸せな時間でした。
 犬をはじめとして動物は今を生きると言われています。今この時を精一杯生きる。苦しい、痛い事があってもその時だけです。わからぬ未来を想像し不安になって思い悩むのは人間だけのようです。
 黙って傍に寄り添ってくれる、抱っこした時のぬくもり、ぬいぐるみでは決して代わりにはならない、何者にも代えがたいかけがえのない存在でした。
 子犬の愛くるしい時は瞬く間に過ぎ、どの子もアッという間に大きくなり、私の年齢を飛び越えおじいちゃん犬になっていき、先にお空へと帰って行きました。
後悔がないとは言えません、あの時こうしてればと思う事は沢山あります。
今でも、もう一度逢いたい、抱きしめたい思いで心がつぶれそうになることもあります。
 犬の寿命も延びて人間同様な病気になり、でも、最後の最後まで精一杯生き抜く姿に感動を覚えました。小さなワンコが小さなお骨になってなお、愛おしく思う。それだけ大きな存在でした。人も犬も死んだら肉体は骨になってなくなってしまうけれど、思い出は、心はどこへも行かない、ずっと私の心の中で生き続ける。だからこそ、生きている今この時が大切なんだと思います。
 人も動物も生まれた限り、いつかは死にゆく運命ですが、愛犬を看取って天寿を全うする、生ききる事を教えられました。数えきれないくらいの幸せをもらいました。ありがとう!
 愛犬との思い出を語る事で少しずつ心に空いた穴が塞がっていくような気がします。寂しさはなくなるわけではなく、逆につもる一方ですが、いつまでもめそめそしてばかりではなく、与えられた命を今この時を、愛犬に見習って前を向いて歩いて行こうと思います。
 最後にライス・ミルクを休日夜間問わずに最期まで診て下さった主治医の大蔵海岸ペットクリニックの獣医の先生に心から感謝を申し上げます。             2024年2月

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